
カザフスタンの文化
美術
カザフスタン最古の美術品といえば旧石器時代と新石器時代の洞窟画が有名で、カラタウ、ハンタウ、ジャシバイ、ザラウツセイなどの洞窟に残されています。

カラタウの岩絵群、紀元前2000年のものとされています。
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中でも現存された最も有名なものとしては、2004年に世界文化遺産にも登録されている、アルマトゥイ市から120キロと170キロにそれぞれ位置するタムガリの考古的景観にある岩絵群が挙げられます。人物や狩猟の場面が描かれた岩絵群は、様々な時代のものが幾層にも描かれていることが特徴的です。牛や鹿、イノシシ、オオカミ、馬などの動物が描かれ、動物の狩猟が主要なテーマとなっていたことが分かります。また、斧や棒を持った騎馬兵や歩兵、羊飼い、頭に光輪をつけた神など、擬人化された人物、想像上の動物も多く登場しています 。

タムガリの考古的景観にある岩絵群、宗教儀式の様子が描かれています。
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タムガリの考古的景観にある岩絵群で、象の上に人が乗っている姿が描かれています。
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中世時代の物質文化の遺産としては、彩色された土器、武器、馬具などがあります。タラズではライオンが描かれた皿(X-XII世紀)が発見され、サライチクでは孔雀が描かれた陶器(XI-XV世紀)が発見され、この時代のものとされています。遊牧民はユルト(家屋)の内装や生活用品、衣服の装飾に広く植物性の絵の具を使っていました。
カザフの最初の、いわゆる「職業画家」は、チョカン・ワリハノフ(Чокан Чингисович Валиханов 1835-1865) です。彼は旅をとおしてカザフやキルギスの歴史や文化を研究し、日記に人々や自然を鮮やかにスケッチし、当時の人々の様子を描いた貴重な記録を遺しています。彼はまたロシア文学の巨匠ドストエフスキーと親しく文通していたことでも知られています。

ワリハノフ作「スルンバの地主邸宅にて」
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また、アンドレイ・ゴローノビ ッチ (Горонович Андрей Николаевич 1818 – 1889)、ワシリー・ヴェレシチャーギン (Василий Васильевич Верещагин 1842–1904)といったロシアの芸術家も、カザフの人々の生活、生活習慣、自然などを積極的に描きました。

ヴェレシチャーギン作「アラタ ウ山脈の遊牧民の道」
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カザフ絵画の発展においてとりわけ重要な位置を占めるのは、カザフ人の生活を克明に絵画に反映させたニコライ・フルドフ (Николай Гаврилович Хлудов 1830-1935)です。彼は美術学校の創設者としても知られています。初代の彼の教え子の中には、カザフスタ ンの国民芸術家章を受章しているアブイルハン・カステーエフ (Абылхан Кастеев 1904-1973)がいます。繊細で叙情的な水彩画や、独創的な物語性のあるカステーエフの作品は、カザフ美術の歴史の中で特別な位置を占めています。

フルドフ作「若き猟師たち」
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カステーエフ作「トルキスタン・シベリア鉄道」
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1930年代半ばになると、優秀なカザフスタンの画家たちが増え、国内の美術界が充実してきます。そうした中、1940年に開催されたカザフの芸術家たちによる最初の合同会議は、カザフの絵画史に新しい局面を開くことになります。人々の偉業や勇気をテーマにした作品が、画家たちの作品の中で重要な位置を占めるようになり、歴史ジャンルが発展していきます。その代表的な画家としてはカミール・シャヤフメトフ(Камиль Махмудович Шаяхметов 1928 – 1995)やモフダフメット・ケンバエフ(Молдахмет Сыздыкович Кенбаев 1925-1993)などが挙げられます。

シャヤフメトフ作「勝者」
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ケンバエフ作「馬追い」
また、ナギムベク・ヌルムハムメドフ(Нагим-бек Нурмухаммедов1924-1986)に代表されるような肖像画のジャンルも著しく発展しています。

ヌルムハムメドフ作「カステーエフの肖像」
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風景画や風俗画といったジャンルにも注目が集まるようになります。国民的画家の一人であるアウバキル・イスマイロフ(Аубакир Исмаилов 1913-1999)は、ロマンティックな風景画をその画風としています。

イスマイロフ作「ピンク色の山」
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また、カザフスタンおよびウズベキスタンの画家とされているウラル・タンシクバエフ(Урал Тансыкбаевич Тансыкбаев 1913-1999)は、コンパクトな叙情的主題から壮大なパノラマ風景へと視点を移行した最初の一人でした。

タンシクバエフ作
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1950年代には、カザフスタンにおいて「静物画」のジャンルが形成されます。また、サリヒトディン・アイトバエフ(Салихитдин Абдысадыкович Айтбаев1938-1994)は、美術が己の前に掲げる課題に対する新たな視点を提示します。アイトバエフの絵はシンプルさ、偉大さ、霊性、そして生まれ育った土地の自然との調和のとれた一体感で溢れています。
カザフのモディリアーニと呼ばれているシャイマルダン・サリーエフ(Шаймардан Тлемисович Сариев (1937 – 1988))は、カザフ民族のアイデンティティーを追求し続け、それを芸術に反映させようとしました。彼は「カザフ流色を置くべきだ」「カザフ流に描くべきだ」と、常々原点としての民族的アイデンティティーを大切にし続け、そして当時主流だった社会主義リアリズムの要件を大胆に拒否し、色彩、構成、形態の上で様々な大胆な実験を行いました。どちらかというとヨーロッパ的なモダニズムのアプローチを持っていることから、モディリアーニと比較されることも多々ありますが、基本的にサリーエフの作風は民族色やカザフの神話詩学との強い結びつきを常に持ち続けていました。

シャイマルダン・サリーエフ作『男性の肖像画』
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現代アーチストの作品は、さまざまな様式や方向性が組み合わされています。自らの世界観を具現化するために伝統的な要素を創造的に追及した作品、エスニックデザイン的な作品、既存の様式にとらわれない独創性に満ちた作品等、現代カザフスタンのアーチスト達の活躍から目が離せません。